「変奏・バベットの晩餐会」劇評と感想

かもねぎショットの節目となった作品『変奏・バベットの晩餐会』は、想像を越えるご好評をいただきました。原作の小説も映画も人気がある作品ですが、「なぜ今『バベットの晩餐会』を?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。私(高見)は、公演前よりも公演が終わって観客の方々からの感想に接して、「今やってよかったのかも」と実感しました。「なぜ今」なのか、皆さんの感想をご紹介することで、お応えしようと思います。

■劇評 「トーキングヘッズ叢書No.76」本橋牛乳
★元になったのは、カレン・ブリクセン(イサク・ディネーセン)の中編「バベットの晩餐会」で、映画にもなっているので、見た人も多いと思う。役者とダンサーが同じ舞台に立ち、物語を脱構築させていくかもねぎショットの舞台は、今回がどんなことになっていたのか。
冒頭、他の役者が同じ地味な衣装のまま小幅な動きを同じように刻む中、バベット役の千葉真由美が踊りだす。この踊りにすべて持っていかれてしまった、というくらい強い印象を与えてくれた。このあとも、千葉の朴訥な山形弁でのセリフ、座る姿や道具を片づける姿すらもダンスになっており、晩餐会では料理をつくる姿を現したダンスは、この舞台のピークの一つになっていた。正直、ちょっと感動して泣けてきた。
スト―リーの大枠は、ほぼ「バベットの晩餐会」によっている。ノルウェーの小さな町の教会の姉妹のところに、バベットがやってくるところからはじまり、人々が彼女を受け入れていく。ただし、町の人々は老人ではなく、むしろ若いという設定。禁欲的な教えの下にある町から、外に出ていきたいという想いがささやかな葛藤となって流れながらも、抑制の利いたおだやかな演技で進められていく。千葉以外のダンサーもまた、町の人としてあまりダンスをせずに日常の演技を行う。この力の抜けた感じがいい雰囲気を出していた。(中略)
千葉の華やかな空間に対して、別の重力を持ち込んでいるのが、オリ―ヴィア役の渡邊信子だった。彼女だけが、禁欲的なプロテスタントの教えに対して批判的であり、町の外に出たいノーラをそそのかす。(略)
「変奏・バベットの晩餐会」においては、禁欲的な町の人々の生活そのものも、そう単純なものではなく、ささやかな喜びも別の世界に出ていきたい気持ちもある。終わりかけた人生での色彩などではなく、まだ続く人生での色彩であり、同時にその困難さがそこにあるのだと思う。そして困難さと色彩の間に、オープンエンドがあるのではないか。(後略)

■感想
先日は公演お疲れ様でした。すごく良かったので言葉にあまりできません。したい気持ちだけで書きます。
2回目にちょぼちょぼ歩きとバベットが動くのが始まる時、もうみれないかもしれないものを見ているような気分になって目に焼き付けたいやら、胸に刻みつけたいやらで苦しい美しい時間をきりきり過ごしました。幸せと言っていいものかわかりませんが僕の中では輝く時間でした。
幕開けの千葉さんが動こうとする初動から泣けた。あんなに飾りたてることが出来そうなものを必要なものだけを選び、選ばれた人物が必死にそれをやる姿に、ああここで終わられたらどうしようと心が持っていかれたまま終わられてしまいました。
ものすごく疲れた状態で観に行ったのに、み終わったあとはアントマンくらい軽く小さくなれました。不思議。

・出だしの美しさに涙がうかびました。おしばいとダンスの融合、すごいと思いました。
・オープニングの登場ダンスはひきこまれました。夢に出てきそうです。
・ちょうどここに来る時読んでいた本に、「……を観ていないということは、あけていないお楽しみの箱がある、ということだね」という文章がありました。私は今夜下北沢で楽しみの箱を開けました。それにしてもどうして涙が出るんだろう。ゆっくり涙の意味を考えます。

・夢中で見入りました。
・時々人にも言うのですが、幸せというのは気づくのに訓練がいるんじゃないかと思います。「恋が叶った」とか「就職できた」というようなことだけが「幸せ」ではないというか、実は私たちはたくさんの幸せにあってるな、と今晩見ていて感じました。
・とても心温まる作品でした。素敵な時間をありがとうございました。
・とても豊かな作品だと思いました。
・充実の公演でした
・各所にくすりと笑える仕かけがあり、すみずみまで楽しめました。
・今日のお客さんはよく笑ってらしてすばらしい。くすくす笑うシーンが随所にあったので、とても笑いやすかった。(芸人)

・構成・演出・脚本、すべてがすばらしかったです。特に用具の使い方がシンプルで面白かった。
・シンプルな舞台で、演じる人が小道具など上手く使っていたのも印象的でした。
・挿入曲や衣裳もステキでした。
・あの世界をこんなシンプルな舞台で表現されたことにびっくりしました。映画を観た時と同じ、いやそれ以上の幸福感に包まれました。
・「幸福感」は、光と色だったんですね。好きな作品(小説)が、すてきなおしばいになって、それを観れて、とてもうれしいです。「幸福」です。

・バベットの「人生」という言葉に感じるものがありました。すばらしいものを見ました。
・子どもの頃、毎週ミサに通っていたが、やっと報われた感じ。ありがとう。
・毎回、どうしてこう楽しい公演が出来るのか
・あっという間の100分。あきさせない楽しいすてきな、そしてきれいな舞台でした。
・何才になっても芝居を続けたいと思いました。

・全ての人に存在意義がしっかりあるので、下味のしっかりついた料理のような充実感があったのはすごい。ダンサーはダンサーの仕事がきちんとあり、その役割を演劇の中にみせていたのはすごい。たぶん一人一人の力を越えた集団のあり方なのだろうか。正直思ってた(予想していた)より何千倍も楽しかったし刺激を受けた。(舞踏家)
・バベットを取り巻く人々、それぞれのキャラが面白い。特にオリーヴィア、当て書きしたんじゃないかって…そう思います。ハマってました。見え隠れする色々な想いが交錯してフムフム…無駄のない場面転換、照明、流石です。
・映画も好きですが、この公演もよかったです。バベット、姉妹はもちろん、映画ではなかったキャラクターのオリーヴィアの毒が効いていました。
・登場人物それぞれ魅力的でした。

・料理つくるパフォーマンス素晴らしい! 一番前でタンノーしました!
・一人一人の個性がすばらしかったです。誰一人欠けても出来上がらない舞台でした。
・とてもおいしそうなお料理! 私も思わず食べてみたくなった。
・バベットは、40~50代の料理人は、若い頃、夜ワインを飲みながら泣きながら見る映画です。全て良く表現されてました。

・思っていたより身体性より言葉が強く存在感を放っていた
・バベットの動きと出演者の動きがセリフなしでも伝わるところありすごいなーと思いました。
・観客として、映像の中にいるような錯覚を感じ、よかったです。

・もともとこの映画が大!好きすぎて、正直心配していました。でも役の入れかえなどすばらしい!もう一度観たいほどです。
・夢を見せていただきました。映画が大好きですが、また違った面が見えて本当に楽しかった。でも一番好きなエッセンスはそのままでした。
・映画よりおもしろかったです!演出すばらしい。
・あのバベットをどんな風に舞台にするのかと思ったら、かもねぎらしい身体技でまとめてきたのでなるほどと思いました。みなさんの身体のうごきがたのしかったです。
・原作の魔的な雰囲気、幻想的な雰囲気をいかした公演でとってもよかったです!

・ラストシーン、壁画のようにきれいでした
・幸せになれました。ありがとう!
・きれいでなみだがでるかと思った
・最後のシーン、ふわふわっとした、でも透明感のある幸福感という、不思議な初めての感情に包まれました。
・今年目にした中で一番美しかったです。幸せな気持ちになりました。幸せだと思ったら涙が出そうになりました。本当に大好きです。
・あたたかいきもちになりました。ブラボー!!
・今までにない気分、幸せな気分になった!
・とても不思議な世界にどんどん引きこまれていきました。最後は私も美味しいご馳走をいただいた気持ちで、幸せな想いでいっぱいになりました。
・途中で終わって落語みたいだった。すごかった。

・最後に色が出てきた瞬間に、あふれる思いをこらえることができませんでした。それが私自身の内なる何かなんだと想像できましたが、何なのかは分かりません。私がそのことをこれからずっと考え続けることになるのですね。「それが人生だ」ですね。この作品に出会えて幸せでした。ありがとうございました。皆すてきでした!
・お客さん(私も含めて)の拍手が多かった。強かった。…また、かもねぎワールドで漂わせてください。
・何か……不思議な気分です。手に汗握るでもなく、腹抱えて笑うでもなく、怒りに震えるでもなく……大きな温かいものにつつまれているような、ホンワカとして安心感を味わいました。
・心が洗われるようでした。
・幸福な気持ちになりました。ホロリと泣けました。
・終わったとき幸せな気持ちになりました。人生は味わいつくさないと。極上の時間をありがとうございました。
・ずっとここにいたいと思いました。
(舞台写真撮影=ワンハーフスタジオ)