『ペルセポリス。そして、』を終えて


撮影=立石勇人

公演を終え、翌日から介護の日々が始まり、またたくまに半月がすぎました。
自分のことだけを考えて過ごせた20代を、ときおり羨ましく思い返すこともありますが、いやいや今だって悪くないぞと思い直すことにしています。

さて、11月に上演した『ペルセポリス。そして、』は、観客の皆さんからたくさんの感想を寄せていただきました。今回は、その中からお一人の感想を紹介させていただこうと思います。吉成ナヒードさん。イラン出身の女性です。

ナヒードさんの感想
「イランのお話だと聞いて、興味があって観にきました。
ごめんなさい、『そんなに面白くないだろう』と思っていたわけではないのですが、
でも、こんなに面白いとは想像していませんでした。驚きました。
たくさん笑い、たくさん泣きました。
この作品は、日本人寄りに描かれていると思いました。でも、私は日本にも長く住んでいますので、その気持ちもとてもよくわかりました。
でも、私はイラン人ですから、日本人のお客さんが笑っているところでも、私だけ泣いているシーンがたくさんありました。ラストはもう泣けて泣けて涙が止まりませんでした。
日本では、イランのことが紹介される機会はほとんどありません。この作品を観た人たちは、イランに興味を持ち、もっとイランについて知りたいと思ってくれるだろうと思います。そのことも、とても嬉しかったです。(談)」
「とてもすばらしかったです。It was full of humor sense and very informative. There is a few chances in Japan to get to know about Iran. Thank you very much for the wonderful Play.(アンケートより)」

吉成ナヒードさん/イラン出身。2000年より、NHKラジオ、ペルシア語部門の翻訳・アナウンサー。ペルシア語翻訳、ペルシア詩の朗読や歌謡の朗唱などのライブ演奏をはじめ、様々な教育文化的事業でイランの文化を伝える活動を行っています。

この夏、「イランのことを何でもいいから知ろう!」と、まずイラン料理を食べに出かけました(笑)。そのレストランで、ナヒードさん企画の「ペルシア音楽の会」のチラシを手にとり、今度はその音楽会に出かけました。その音楽会で、ナヒードさんがアフタートークをする映画の会のチラシを手にとり、今度はその映画を観に出かけました。その会場で、私は彼女にチラシを渡し、彼女から名刺をいただいたのでした。
「今回の作品は、イランの方が観たら、どう思うのだろう」と気になっていました。日本人の勝手な思い込みだと怒られてしまうかもしれない…という心配もあったわけです。でも、観てもらい感想を聞いてみたい、という誘惑のほうが優り、ナヒードさんに今一度、「観てください」とメールを送ったのでした。
お忙しい中いらしてくださり、終演後に残ってくださり、目に涙を浮かべながらこのようにたくさん話してくださるのを聞きながら、演劇というものをもっと信じてもよいかもしれないと嬉しく思いました。

お一人だけ紹介しようと思ったのですが…
アンケートには「とても良かったです。前回よりもさらにパワーアップされていました。ヌールが本当にガザの少女に見えました(私はガザに行ったことあるんです)」という感想もありました。これも、なぜか、とても嬉しいものでした。

2年前の『ペルセポリス~私の知らない国のこと~』が終わると、イランとアメリカがまた気まずい関係になりました。中東の情勢は本当にめまぐるしく変化していくなあと思っていましたら、なんとなんと、今回の大改訂再演『ペルセポリス。そして、』が終わると、トランプ大統領のあの決断。個人的には膝が抜けました。でも、この「エルサレム」を巡っての所感を書き始めると大変な長さになってしまいそうなので、別の機に回すことにします。

今回の『ペルセポリス。そして、』では、広岡由里子さん演じる「ヌール」がガザ地区出身という設定でした。見たことのない「ガザ地区」が画面に出てこないかとテレビの前にかじりつく日々を過ごしつつ。