「変奏・バベットの晩餐会」の感想をご紹介


千秋楽の開場5分前の出演者一同

「変奏・バベットの晩餐会」をご覧いただいてすぐに、メールでお寄せくださったお客様の感想をご紹介します。(掲載のご快諾もいただきました)


●昨夜の公演、「変奏・バベットの晩餐会」を拝見した者です。
昨日は感想を書く余裕がなかったのですが、見終わってとても暖かい、幸せな気持ちになれたことをお伝えしたくてメールさせて頂きました。

全く何の事前知識もなく、原作も知らず、失礼ながらパンフレットも読まずに拝見しましたが、晩餐の支度をするバベットのダンス(とドラムソロ)が本当に素晴らしく、鳥肌が立ちました。それまで白一色で、寒くて閉じた感じの村の人達が、バベットの作る渾身の晩餐で鮮やかな彩をまとい、幸せが溢れてくる、みたいな演出が本当に素敵でした。衣装も、音楽も、もちろん皆様の演技も、ちょこちょこ歩く様も、舞台転換(と言うのでしょうか)も、テンポよく素敵でした。

演劇に関しては全く詳しくないですし、あまり観る機会がないのですが、観た後にこんなに幸せな気持ちになれたのは初めてです。感想を書くのも初めてです(笑)

最近仕事でイライラとストレスがひどかったのですが、お陰様ですっきりしました。
今日、明日の公演もがんばってください。ありがとうございました。


●俳優さんの表情 目線の細かいやりとりが手にとるように分かり、改めて俳優という職業の説得力に見入るばかりでした。

大衆は「大衆政治」などと揶揄されますが、大衆には大衆の憲法があり、それに小さな損得や妬み嫉みを許容していく日々を委ねていると思います。
今回は原作があったとはいえ、そんなかもねぎ流の翻訳が随所になされていたと思います。都会に憧れる若者、人口流出に地方が悩む図式は現代そのものですし、支配する側は自分たちの理屈で世界を狭くして、閉じた論理に終始するさまは滑稽です。

この村にしかないスポーツ。そのことを知らない村人。現代のようにSNSがあったらすぐに分かってしまうことなのか、そもそもそんなことは気にしない人たちなのか。人一倍うわさ話が好きで、それに振り回され、他人にばかり興味をもち、一番大切な自分のことは最後まで結論を出さず終えていくのでしょうか。
船乗りやオリーヴィアのように外の世界を知ることの優越も、今はネットのせいで平準化してしまったかもしれませんが、それでもあの村人たちが、知らない世界に漕ぎ出すのでしょうか。あの村は将来どうなるのか、どうやって変わらないようにするのか。
興味が尽きません!

白は教会の教えを守る従順さや、純潔 清貧を示しながら、その下にある欲望や駆け引きを覆い隠し、対照的に色鮮やかな布を使ったフィナーレ。
ミニマムな演出に清々しさを感じました。
ひとつの空間でありながら全く異なる世界を見せることは演劇にしか出来ないと思います。最近テレビドラマでもワンシチュエーションの設定がやや流行しています。コントのような感じです。現実を突き詰めながらも、空間を異化させる手法は演劇から学ぶことが多いです。

チラシにありましたが、「自分が捏造したシーンを何十年も大事に温めて大人になった」この経験はあるあるです。村上春樹の小説を読みふけっていた時期があったのですが、久方ぶりに文庫を手に取ると気に入っていたシーンなどどこにも見当たらず。松本清張のミステリーの落ちも違っていたり。走れメロスでさえ勘違いした記憶で覚えていたことも最近ありました。(NHK教育テレビ「100分で名著」を見て気づきました)
そんなズレからひとつのお芝居を作りあげてしまう創作能力に脱帽です。次回の舞台も楽しみしております。言葉に尽くせぬ思いもありますが、またお時間あるときに改めさせて頂きます。幸福な時間をありがとうございました!